こんにちは。kimiiro の矢守です。
今回も許可を頂きましたので、ある 1 人のクライアントさん(女性、当時 24 歳)のお話をご紹介させて頂こうと思います。
この方のお話しは、真面目で生きづらさを抱えている人が、生きごこちを取り戻すことの大切さを教えてくれているように感じましたので、ぜひ紹介させて頂ければ幸いです。

「今の仕事、辞めようか迷っています。。。」
最初にご相談を頂いたとき、彼女はこんな風に、今の会社員としての仕事を続けるべきかどうかを迷われている状態でした。とある会社の事務職を 3 年続けられており、その口調や雰囲気から随所に「真面目さ」を感じられる方だったのを今でも覚えています。転職を考えられていたようで、社会人向けの合同採用説明会にも参加されていたそうです。そこでの相談会に参加しても、「何かが違う。。。」とモヤモヤが晴れない日々を過ごされていました。
そこで、仕事を辞めようかと思った理由をお伺いしますと、今の仕事にやりがいが見いだせないといったことを話されていました。「ふむふむ、めちゃくちゃよく分かる」と心の中で思いながら、その背景は人それぞれなので、もっと深く色々な角度からお話を伺うことにしました。そうするとしばらくたって「私、本当は絵を描きたいんです」と話してくれました。「これは彼女にとってものすごく大切なことなんじゃないか」と直感でそう感じた僕は、さらに詳しく、絵を描くことについて教えて頂くことにしました。

「デザイナーで食べていくのは難しいから辞めておきなさい」
そもそも絵を描きたいのに事務職という全く別分野の仕事をされているわけですが、これはいったいどういうことなのでしょうか?そのあたりも詳しくお伺いさせて頂きました。
背景はこうです。実は、彼女、小さいころから絵を描くのが大好きだったようです。なので、デザイナーになりたいという夢も抱いたことはあるそうです。しかし、親御さんから「デザイナーで食べていけるのは難しいから辞めておきなさい」と言われ続けていました。決して親御さんとの関係が悪いという訳ではないので、彼女は親の言うことを素直に聞いてきた訳ですね。このあたりからも彼女の真面目さが伺えますね。本当は絵を専門的に学べるような学校に進学もしたかったようですが、親の言うことを守った結果、そういった進学も断念。真面目に勉強をし、公立大学へと進学されました。
生きごこちの悪さがモヤモヤの正体
さて、そのように自分の本当の気持ちを心の底に沈めたまま、大学を卒業し会社員になりました。そして 3 年が過ぎ、その沈めていた本当の気持ちが、徐々に浮上してきているんじゃないかなと、僕は感じました。これがモヤモヤの正体です。やりがいがないとか、仕事内容が合わないとか、そういう表面的なことではなく、彼女のこれまでの人生やしがらみが作り出した、生きごこちの悪さがモヤモヤの正体だったのかなと思います。かといって親御さんが悪いのか、そういう話でもありません。親はこどものことをいつまでも心配に思う生き物なのでしょう。愛情表現のひとつと捉えていいと思います(度が過ぎるとよくはありませんが)。
大事なのは、そういう気持ちに気付いた自分がこれからどうするのか、です。真面目な私たちは、決して人に迷惑をかけぬようにルールを守り続けようとします。子どもの頃はそれが評価されていたかもしれません。しかし、24 歳は立派な大人です。もう自分の道は自分で決めていいんです。

目標は、キャリアを選べるようになること
そんな背景を詳しく丁寧に教えて頂いた後、改めてお聞きしました。「やっぱり絵を描きたい?」「はい、描きたいです」力強くそんな返答が返ってきました。彼女の眼差しや言葉の重みから、嘘偽りのない気持ちを受け取ったような感覚がありました。ここでひとつの疑問が浮かび上がります。本当に絵が仕事になるのか?です。本当は絵を描くことが好きで、それが仕事になれば一番良いのだろうけれど、本格的に絵を描いたことのない彼女に対して、仕事になること、絵で稼いでいけることを約束するわけにはいきません。しかし、彼女の中でも、僕の中でも答えは共通してました。それは「キャリア
を選べるようになる」こと。
もう少し具体的に言うと、今の会社に残る、デザイン業界へ転職する、副業から始めフリーランスとして活動する、絵を仕事にする手段はひとつではなくいくつもあります。その中から選べるようになること、そこを目指していくことに彼女と僕の間で共通の目標にしました。そして、何よりも絵を描いている時間を増やすことが、彼女の生きごこちをもたらしてくれることだと僕は考えていました。

絵を描くこと、まずは Mac を購入することから
さあここからは、絵を描くための階段を一緒につくって、一緒に登っていく挑戦です。絵を描くのに何が必要か彼女と一緒に考えた結果、Mac を購入するところから始めていくことにしました。とはいってもどのようなスペックのものが必要なのか僕もわかりませんから、一緒に専門家を探して勉強しました。そして専門ソフトである illustrator と Photoshop の導入やら操作方法やら、本当に一から一緒にやりましたね。
でも、さすがは絵が大好きなだけあって、吸収力が恐るべし、どんどんできるようになるわけです。そしてしまいには、Twitter から絵の仕事を募集して副業として仕事にしてしまうのです。ここまでくると僕はもうついていけませんね笑。もちろん、初挑戦なことだったので、その都度、不安なことはたくさんあったと思います。でも確実に言えることは、絵を描く彼女の姿は、その楽しさを語ってくれる彼女の姿は、本当にイキイキとしていて、こちらも嬉しくなるんです。それは紛れもなく、彼女の生きごこちなのではないのかなと思います。

(Twitter で約2万いいね、約 3800 のリツイートがなされた)
絵を描くキャリアは始まったばかり
こうして、心の奥底に沈めていた自分の気持ちを取り戻し、果敢にも「絵を描く」ことに挑戦していくことで、生きごこちを感じれるようになった彼女。まだまだ絵を描くキャリアは始まったばかり。「今が一番楽しいです!」と僕に話してくれた最後のセッションは一生忘れることはないでしょう。きっと今も、もがきながらも絵を描くことにトライしているに違いありません。こんなふうに、真面目で生きづらいと思いながら働いている人が、1人でも生きごこちを感じながら働けるようになってもらえればと願って止みません。
kimiiro 矢守裕貴